ChatGPTでスクリプトを活用しよう

スクリプト、使ってますか?

Illustratorにスクリプトというツールがあるのを知っていますか?
うまく活用するできれば、作業効率が大幅にアップします。仕組みを理解することで、普段面倒に思っている作業を簡単にすることができます。

スクリプトの基本

Illustratorでスクリプトを使うには、「ファイル」メニュー>「スクリプト」とメニューを選ぶことで実行します。メニューを選択するだけで手作業で行っていた作業をワンアクションで実行したりすることができる便利なものです。

 

繰り返し行うような作業や、少し手間のかかる作業をスクリプトが自動的に処理してくれるので、とても効率的です。

スクリプトは以下のようにテキストで記述していきます。コンピュータプログラムに似たものです。JavaScriptかAppleScriptという言語で記述したファイルを読み込むことで自動処理を行うことができるのです。

とはいうものの、プログラミングの経験がないと、Javascriptなどのスクリプト言語を一から勉強するのはなかなか大変です。Illustratorユーザーで大多数の人は、scriptなど書いたことがないのではないでしょうか。時間がある人はこれを機会にチャレンジされるのもいいかと思いますが、時間がない人にはなかなか難しいでしょう。
しかし、時間や知識がない人でもスクリプトを利用する方法があります。

インターネットで検索してみる

インターネットで「Illustrator」「スクリプト」等のキーワードで検索してみましょう。オリジナルで作成されたスクリプトファイル(.jsx)を公開して、ダウンロードできるように提供しているサイトがいくつかあります。その中から自分が役に立ちそうなものをダウンロードすれば、そのまま使うことができます。

自分の作業にちょうど合ったスクリプトが見つかり、ファイルが入手できれば、スクリプトを使用して効率的に作業することができます。(※ファイルの使い方は後述)

 

ChatGPTを利用して書いてみる

生成AIのChatGPTを使用すると、驚くことに、AIにスクリプトを書いてもらうことができます。試してみたところ、JavaScriptのプログラミング知識がまったくなくてもいくつかの便利なスクリプトを書くことができました。

今回は、例としてIllustratorでフライヤー等を作成する下準備を自動化してみましょう。

完成図

スクリプト❶
トンボを作成するためにアートボードサイズの長方形を作成する。

1. ChatGPTのサイトにアクセスする。

https://openai.com/ja-JP/chatgpt/overview/
この時、ログインしなくても使えますが、作業履歴等を残すことができるので、登録したほうが便利


2. 質問欄に指示を入力


「トンボ」という名前のレイヤーを作成して、そこにアートボードサイズと同じ大きさの長方形を作成するIllustratorのスクリプトをJavaScriptで

スクリプト言語は、JavaScriptかAppleScriptかを選ぶことができますが、Windowsは、AppleScriptが使えず、Javascript一択。また、Illustratorから直接実行できるのは、javascriptだけなので、汎用性を考えると一般的にはAppleScriptよりもJavaScriptで記述したほうがいいでしょう。(AppleScriptとの違いについては後述)

3. スクリプトが生成されたら、全てコピーしてテキストエディタ等にコピー。

Visual studio Code(https://code.visualstudio.com/)等の開発環境向きのエディタ、または、テキストが扱えれば、通常のテキストエディタでも大丈夫です。

コピーできたら、そのまま拡張子 .jsxをつけて保存します(ファイル名は自分が解りやすければ何でも可)テスト段階では、作成したファイルは、デスクトップでもどこでもいいので自分がわかりやすい場所に保存します、

※AppleScriptの場合、拡張子は 「.scpt」もしくは「.AppleScript」で保存

4. 動作をチェックします。

Illustratorでアートボードを作成したら、ファイルメニュー>スクリプト>その他のスクリプトで、自分が作成したスクリプトファイルを選択すると、実行されます。
すぐにうまくいく時もあれば、エラーが出て止まってしまうこともあります。

5. うまくいかない時はChatGPTに戻り、修正させる。

テストでうまく動作しない時は、再びchatGPTに戻り、スクリプトを修正します。この時も特にスクリプトの知識がなくても、○○というアラートが出てしまう。サイズが違う、位置が違う、など、会話スタイルで修正指示を追加するだけで修正案が出てくるので、何度かやりとりすることで、完成に近づいていきます。

6. 3~5のテストを繰り返して、うまく動作すれば完成。

7. 完成したスクリプトファイルは

○Macの場合
 /Applications/Adobe Illustrator ”バージョン”/Presets/ja_JP/スクリプト/

○Windowsの場合
 C:/Program Files/Adobe/Adobe Illustrator CC ”バージョン”/Presets/ja_JP/スクリプト

フォルダに入れます。Illustratorを再起動するとファイルメニュー>スクリプトから実行できるようになります。

8. アートボードサイズの長方形ができていればOK。

作成した長方形を選択して、オブジェクト>トリムマークを作成、を実行することで、トンボが完成します。

9.「アクション」機能を組み合わせて、さらに効率アップ

スクリプトだけで全て補おうとしても、なかなかうまくいかない場合もあります。今回実は、トンボ作成までのスクリプト作成にチャレンジしたのですが、なかなか思うようなものができませんでした。そのような時は、スクリプトにこだわって回り道するよりも、「アクション機能」を組み合わせる事で、簡単に完全自動化できる場合もあります。
まず今回のトンボ作成のルーチンを確認してみましょう。

「アクション機能」は、言ってみれば、手作業の動きを「録画」するように登録して、同じ作業をワンクリックで行えるようにする機能です。古くはPhotoshopに最初に搭載され、活用されている方は多いのではないでしょうか? 同様の機能がIllustratorにもあります。使い方はPhotoshopとほぼ同じです。

アクションを使用した登録方法

◎「アクション」パレットを開いたら、サブメニューから「新規アクション」または下にある「+」ボタンを押します。

◎ダイアログが開くので、自分がわかりやすい名前をつけます。今回は「トンボ作成」とします。
OKボタンを押すと、「録画」が始まりますので、実際の作業を行います。
今回の流れとしては
「スクリプトメニュー>トンボ用長方形(←ここは自分で名づけたもの)」>長方形ができる
>「全てを選択」>「オブジェクト>トリムマークを作成」
と作業をして完了したら下の停止ボタン「▪️」を押します。(ラジカセのボタンと同じですね)

◎普通ならばここでアクションが完成するので、次からは作成したアクションを選んで→矢印マーク(再生ボタン)を押せば自動処理ができます。また、サブメニューから「ボタンモード」を選んでおくと、ボタンを押すだけで実行できます。

◎ところが、今回のようにスクリプトをメニューから実行させようとしても、うまく登録されません。自分で作成したスクリプトのメニューなどは、一般的にはアクションで「録画」できないのです。

◎スクリプトをアクション内で実行させるために、アクションを編集します。アクションパレットのサブメニューから「メニュー項目を挿入」を選びます。

◎ダイアログが開くので、そのままファイルメニュー>スクリプトメニュー>(長方形を作成するスクリプト)を選びます。ここで文字が入りますが、なぜか必ずしも正確ではないことがあるので、自分が作成したスクリプトメニュー名を正確に入力します。

◎これでアクション内でスクリプトが実行されるようになりました。ワンアクションでトンボの作成ができるようになりました!



スクリプト❷ 
背景色をつけるために、塗りたし3ミリを追加した長方形を作成する。

ChatGPTで
アートボードサイズに天地左右3ミリづつ追加したサイズの長方形を配置する

等の記述をしてスクリプトを書き出させるか。
スクリプト1で作成した、アートボードサイズの長方形に対して

天地左右各3ミリ追加したものを作成したい

など追加項目として入力してもうまくいく可能性があります。

コツとしては、一つスクリプトが完成したら、色を変えたい、線をつけたい、など、ステップ・バイ・ステップで作成していくほうがうまくいく可能性が高いです。いろいろ指示を追加して試してみるといいでしょう。

完成したら、スクリプト❶と同様にIllustratorで実行してみます。

スクリプト❸ 
マージンガイドを作成するためにアートボードに加減したサイズの長方形を作成してガイドライン化する。

マージンガイドを作成したいのですが、この場合、天地左右のアキ量がその都度違うため、最初にダイアログを表示させて、その都度数値を入力させるようなものを作成したい。

Illustratorスクリプト
アートボードサイズから天地左右それぞれ加減した大きさの長方形を作成。そのとき天地左右それぞれの加減値をダイアログで入力できるようにしたい。単位は mmで、X座標は左、Y座標は上の座標と共通なので、聞かなくてもよい。作られた長方形はガイドライン化する。


ChatGPTと会話をやり取りしながら、指示を追加したり、変更したりしながら生成していくと、文章表現としては、たどたどしいですが、このような感じでの指示でも、生成>テスト>修正>テスト>修正>テスト~ と繰り返していくことで、スクリプトが完成しました。

スクリプトやプログラミングの知識が全くなくても、ChatGPTを使うと、スクリプトが簡単に作成できることがわかりました。普段の自分の作業内容やルーティンワーク等で、効率化したい時は、ぜひトライしてみましょう。

 

AppleScriptで書く利点

前述のとおり、Illustratorのスクリプトを書く場合、JavaScriptの方が安定性も汎用性も高いので、おすすめです。また、AppleScriptの場合、Illustratorのメニューに登録して、直接実行することができません。そうすると、AppleScriptで作成する利点がないようにも感じられますが、メリットもあります。外部からIllustratorをコントロールできるので、他のアプリケーションとの連携をしたい時や、大量のファイルを処理しなければならない時には便利な場合もあります。

AppleScriptで作成するメリット
●アプリ化しておくと、ファインダー上から操作できる。
例)ファイルの中の特定の文字列だけに色をつける。

●Illustratorだけでなく、他のアプリと連携することができる
例: Illustratorで作成したベクターアートをPhotoshopにエクスポートして、画像編集を行う
例: Illustratorで作成したファイルをメールで送信するスクリプト。

 

 

AppleScriptアプリの作り方

●スクリプトは、「スクリプトエディタ」を開いて記述。
(今回はChatGPTからコピーしてペースト

※スクリプトエディタはMacに最初からインストールされています。

●ファイル>書き出す この時「アプリケーション」を選んで保存

●ドロップレットとして使いたい場合は、スクリプトにその旨を入れておけば(今回は、ChatGPTに使い方もオーダーして記述しておく)矢印つきのドロップレットアイコンができます。ドロップレット機能を持たせれば、ドロップするだけで まとめて処理することもできるよ!

 



ChatGPTを使うと、まったくの知識がなくても、いくつかのスクリプトを作ることができます が、ChatGPTは必ずしも正確ではないこと。また完璧ではないということも覚えておきましょ う。ChatGPT頼みだけでは、最後まで完成しない場合もあります。やりとりをしていくことで、ChatGPTがスクリプトの解説もしてくれるので、これを機会に勉強してみるのもいいでしょう。また、スクリプトだけでなく、今回のように、アクションと組み合わせた方がてっとり早い場合もあります。作業効率化にぜひトライしてみてください。

 

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